Story

プロジェクトストーリー

- デザイン思考で、これまでの社内の空気が一気に変わった -

Project 01

アルテクロス株式会社

創業50年の繊維メーカーが挑む「強く、美しい」バッグづくり

現在、福島県では「デザイン思考のモノづくり企業支援事業」に取り組んでいます。高い技術力を持った県内の企業が、「デザイン思考」に基づいた製品開発を実践し、新たな価値を生み出し、市場開拓に向けたチャレンジをサポートしていくこのプロジェクト。本事業をスタートするきっかけとなった、「アルテクロス株式会社」の挑戦をご紹介します。

老舗の繊維メーカーがつくる、はじめてのBtoC商品

老舗の繊維メーカーがつくる、
はじめてのBtoC商品

アルテクロス株式会社は、創業から半世紀の歴史ある繊維メーカーです。ガラスを繊維状に加工したグラスファイバーや、鋼鉄の5倍の強度を持つアラミド繊維などを製造・開発しています。確かな技術で全国の企業から信頼を寄せられており、大規模スタジアムの屋根や産業用のベルコトンベアなど、多くの場所に同社の製品が取り入れられています。

これまでアルテクロス株式会社では、取引先企業のニーズに応えるBtoB製品を中心にビジネスを展開してきました。しかし今回の挑戦で手がけたアイテムは、一般の方々が購入できる「バッグ」。これには、同社の主力製品である「アルテオリ」が使われています。世界でも希少な「織り」の技術が駆使されたメッシュクロス(生地)です。ガラス繊維やアラミドなどに樹脂をコーティングした糸が使われており、耐久性・防汚性に優れていることが特長。多少ラフに扱っても傷がつきにくい。「強さ」と「美しさ」を兼ね揃えた、これまでにないバッグが完成しました。

「デザイン思考」をサポートするクリエイターが集結

「デザイン思考」をサポートする
クリエイターが集結

このバッグの完成までには、1年以上の歳月を要しました。プロジェクトがスタートしたのは2019年のはじめ。アルテクロス株式会社の挑戦をサポートする支援チームが結成されました。

メンバーは、福島在住のデザイナーである大竹さんと、都内でデザインプロダクトの企画を手がける「アッシュコンセプト」のクリエイター陣。大竹さんは会津漆器などのデザインを行う会社「楽膳」の代表であり、アッシュコンセプトはさまざまな商品に関するデザインコンサルティングの経験が豊富にあります。一般ユーザー向けの商品をほぼはじめて手がけるアルテクロス株式会社にとって、心強いメンバーが揃いました。

2019年2月。「今回のプロジェクトで何をつくるか」をテーマに、最初のミーティングが開催されました。「アルテオリ」の強みを活かしつつ、使った人に本当に喜んでもらえるアイテムは何か。カゴ、バスケット、ビーチサンダル、麦わら帽子…デザイナーの大竹さんを中心に、さまざまなアイデアが出され、話し合いは熱を帯びました。

使う人に喜ばれるバッグをつくろう

使う人に喜ばれる
バッグをつくろう

数々の候補の中から選ばれたアイテムは「バッグ」でした。バッグは素材の使用面積が大きいため「アルテオリ」の美しさを充分に活かせるし、街中で多くの人の目に触れてもらうことができる。これまで、取引先の製品を陰から支えてきたアルテクロス株式会社の技術を、広く知ってもらえるチャンスにもなります。デザインは「アルテオリ」の魅力がそのまま伝わるよう、シンプルでベーシックなものにする、という方向性も決まりました。

そして、いよいよ「デザイン思考」に基づいたバッグ制作がスタートすることになりました。今回のプロジェクトの主軸となる「デザイン思考」とは、アルテクロスが生み出す素材「アルテオリ」を観察し、その魅力、長所、短所を理解。そしてその情報を仕分けして、それを元に使う人の気持ちに寄り添い、課題や問題点を想像しながら商品をつくっていくビジネスプロセスのこと。「共感」→「問題定義」→「アイデア」→「プロトタイピング(試作品)」→「検証」という流れで、つくる人よりも使う人の発想から、喜ばれるモノづくりを進めていきました。

バックを使っている人は、どんなことを考えているか?

バックを使っている人は、
どんなことを考えているか?

はじめに、チームメンバーで「バッグを使う人が考えていること」の共感ポイントを探りました。大きなマザーズバッグを肩にかけてベビーカーを押すママさん、重そうなビジネスバックを抱え先を急ぐビジネスマン…。一口にバッグといっても、その種類も使う人もさまざまです。街中を歩く彼らの気持ちを想像していきます。

その次はユーザーへの理解を深め、課題や目的を見つけるフェーズへ。そこで、デザイナーの大竹さんから「身を守る」というコンセプトが提案されました。「街中で突然、災害や犯罪に巻き込まれる可能性がないとは言えない。そんなとき、バッグなどの手近なもので身を守ることができたら心強いのではないか」と。

「アルテオリ」はとても強いクロスです。主材の一部であるアラミド繊維は、防弾チョッキや安全靴に使われることもあります。「アルテオリ」でつくられたバッグなら、震災時に落ちてくる破片から頭を守ったり、刃物などで襲われそうになったときに身を庇うことができるかもしれない。この意見にメンバー一同が賛同。その次の「アイデア」のフェーズで「とっさの危険から身を守れるバッグをつくる」というテーマが決まりました。そして、大竹さん手づくりの「試作品」で「検証」を進めていくことになります。

順調に進んでいた企画は、いったん白紙に!

順調に進んでいた企画は、
いったん白紙に!

トートバッグ、リュック、ビジネスバッグ――「身を守れるバッグ」とは、どんなデザインだろうか。試作品を手に、全員でアイデアを出し合いました。ランドセルやペット用キャリーバッグはどうか、など活発に意見が交わされ、プロジェクトは順調に進んでいきました。

ところが2019年8月。「身を守る」というコンセプトをリセットし、方向転換を図ることになったのです。その理由は、「身を守る」ことを最優先にしたデザインを考えると「アルテオリ」の美しさを充分に伝えるのが難しく、防災・防刃アイテムとして充分な強さを生み出せないことが分かったからでした。

とはいえ、これはデザイン思考のモノづくりにおいて想定内の展開です。壁にぶつかったら、再度ユーザーの立場になって考える。使う人に喜ばれるバッグとはどういうものか、という段階からコンセプトを練り直すことになりました。

紆余曲折を経て生まれた「強く、美しい」バック

紆余曲折を経て生まれた
「強く、美しい」バック

そこで導き出されたコンセプトは「美しさと丈夫さ、そして軽さも兼ね備えている」というものでした。レザーのような高級感のあるバッグが好きな人は多いけれど、手入れや保管が難しい。そのため、気軽には使えない、という課題があることに気づいたのです。

フォーマルやビジネスで活躍できる、傷や汚れにも強くて軽い。そういうバッグがあれば、欲しいと思う人は少なくないでしょう。これなら「強さと美しさを併せ持つアルテオリの魅力を存分に表現できる」という柔軟な発想に、メンバーの意見が一致しました。

新しいコンセプトが決まり、ここからもう一度、試作と検証を進めました。使われるシーンを想定し、サイズ、デザイン、色、ハンドルの長さ、インナーポケットの位置などを次々と決定。特にこだわったのは、軽さと使いやすさにつながるメッシュの透け感でした。アルテオリの最高の美しさを引き出し、軽さと機能性を高めるためには、どのくらいの密度で織ればよいか。――こうした細かい部分まで試行錯誤を繰り返し、視覚化するための試作を重ねていきました。

そして2020年2月。ついに個性・機能・美しさを表現した最終の試作品が完成。苦労の末にできあがったバッグを手にしたときのメンバーの喜びは、ひときわ大きいものでした。最終的に展開する候補となったバッグは、縦型・横型・バケット型のトート、ポーチの4種類に決定。「アルテクロス」という名のブランドで展開することも決まりました。いくつもの丈夫な糸を織り合わせてつくりあげた、強く、美しいバッグです。芯の強い、福島らしいバッグが完成しました。

プロジェクトメンバー

「デザイン思考」を主軸に、使う人に喜ばれるモノづくりを目指した今回のプロジェクト。紆余曲折を経て、新しい価値を持つバッグをつくることができました。福島県では今後もこのプロジェクトを通して新製品開発を支援します。次のチャレンジをお待ちしています。

こうして今回のプロジェクトで開発商品について
詳しくは下記をご覧ください。

商品紹介

PAGE TOP